2026年6月 | クリニック勤務25年の経験から

「医療事務って、地味な裏方仕事でしょ?」

よくそう言われます。求人を見ても給料は高くないし、華やかな仕事でもありません。それなのに私は、この仕事を25年続けてきました。しかも「辞められなかった」のではなく、「辞めたくなかった」のです。

この記事では、その理由を現場の話でお伝えします。医療事務に興味はあるけれど、やりがいのある仕事なのか半信半疑……という方に読んでほしい内容です。

続けてこられた理由は、たったひとつ

先に結論を言います。私が25年続いた理由は、受付という場所が「人のドラマの一番近く」にあるからです。

医療事務の仕事は、レセプト(診療報酬の請求)や会計など、たしかに事務作業が中心です。でもその作業のすぐ向こう側には、いつも患者さんがいます。生まれたばかりの赤ちゃんから、90歳を超えるおじいちゃんおばあちゃんまで。受付に座っているだけで、町のいろんな人生が毎日目の前を通っていくのです。

これは、書類だけを相手にする事務職では絶対に味わえません。

そもそものきっかけ:じっと座っていられない性格でした

私が医療事務を選んだ理由は単純で、「人が好きだから」。モノを相手にする流れ作業より、人を相手にする仕事がしたかったんです。

もうひとつ、白状すると……私はじっと座っているのが苦手です(笑)。受付は、座って入力したと思ったら立って患者さんを案内し、電話を取り、カルテを探しに走る。この落ち着きのなさが、私の性格にぴったりでした。

「事務職=一日中座りっぱなし」と思っている方、医療事務は違いますよ。むしろ万歩計をつけたら驚くと思います。

理由①:自分の仕事が、クリニックの経営にそのまま直結する

医療事務のやりがいで、意外と知られていないのがこれです。

クリニックの収入は、患者さんの窓口負担だけではありません。残りの大部分は、私たち医療事務が毎月作る「レセプト」で保険者に請求して、はじめてクリニックに入ってきます。つまり、私が請求ボタンを押さなければ、クリニックの売上は確定しないのです。

毎月1日から10日ごろまでは、このレセプト作業に追われます。正直きつい期間です。それでも全部の請求を終えた瞬間の「今月もクリニックを支えたぞ」という手応えは、この仕事ならではだと思います。

自分の仕事の成果がここまではっきり見える事務職は、なかなかありません。

理由②:マフィアのドンが教えてくれたこと

25年もいると、忘れられない患者さんがたくさんいます。

たとえば、93歳のおじいちゃん。ヘアワックスで髪をビシッとなでつけて、顔つきは険しくて、雰囲気はまるでマフィアのドン。近くの薬局のスタッフさんたちからは、本気で怖がられていました。

そのおじいちゃんが、ある日受付で言ってくれたんです。

「わしはな、あんたたちに会いにこの病院に来てるんや。いつも元気がもらえる」

あの強面からこの言葉ですよ。反則です。

後日、薬局の方に「あの人、ほんとはお茶目でかわいいおじいちゃんなんですよ」と伝えたら、ひっくり返るくらい驚かれました。ドンの素顔を知っているのは、毎日顔を合わせる受付だけの特権かもしれません。

小児科から内科・整形外科のクリニックに移って気づいたのは、人生の先を行く先輩たち——おじいちゃんおばあちゃんが、めちゃめちゃ面白いということ。

コロナ禍で検温が必須になったときのこと。おでこで測る体温計を向けたら、ツルッツルの頭をぐいっと体温計に押しつけてくるおじいちゃんがいました。おでこ、どこまでですか(笑)。こんな話、し出すときりがありません。

毎日が絶対に同じ日にならない。それがこの仕事の面白さです。

正直に言うと、しんどい部分もあります

いいことばかり書くのはフェアではないので、正直に。

給料は高くありません。月初のレセプト期間は残業もあります。理不尽なお叱りを受けて、裏で泣いた日もありました。

それでも辞めなかったのは、家庭と両立しやすい働き方ができたこと、そして「人のドラマの近くにいられる」魅力が、しんどさを上回ったからです。このあたりのリアルな話は、別の記事で詳しく書く予定です。

最後に:迷っているあなたへ

医療事務は、派手な仕事ではありません。でも「人が好き」「誰かの役に立っている実感がほしい」という方には、これ以上ない仕事だと25年働いた私は思います。

迷っているなら、まずはどんな仕事なのか、資格は必要なのかを調べるところから始めてみてください。このブログでは、きれいごと抜きの現場の本音をこれからも書いていきます。